新規就農者はどこで農業を始める?最新調査が示す「就農地選択の理由」トップ10
- ishikawa030
- 2 時間前
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「どこで農業を始めるか」は、新規就農にとってお金や技術と同じくらい重いテーマです。
この記事では、全国農業会議所の「新規就農者の就農実態に関する調査」データを使って、新規就農者が「就農地選択の理由」を数字で整理します。
■最新調査が示す「就農地選択の理由」トップ10

まず、2021年調査の指摘率(複数回答)をトップ10を見ると、次の5つが上位になります。
取得・賃借できる農地があった(50.8%)
行政等の受け入れ・支援対策が整っていた(28.7%)
就業先・研修先があった(28.3%)
自然環境がよかった(24.4%)
実家があった(22.8%)
最も重要なのは、どの調査年でも1位が変わらないという点です。つまり、新規就農者はどれだけ思いを抱いていたとしても、最終的に「農地が借りられる場所」を選んでいるという揺るぎない事実があります。
行政支援や研修先の存在も、ここ10年で比重が確実に上がっており、単なる地域のイメージではなく、制度と環境の整備が見える場所が選ばれていることがわかります。
■10年間の変化:支援・研修の重要度は確実に増加
2013年 → 2016年 → 2021年の変化を見ると、具体的に次の傾向が現れています。
農地があるかどうかは常に約5割で安定(不動のトップ要因)
行政支援は26.0% → 27.0% → 28.7%と緩やかに増加
研修先の存在は22.6% → 27.7% → 28.3%と明確に増加
自然環境・地縁要因は2割強で横ばい

特に「研修先」「支援体制」の伸びは象徴的です。新規就農者は、農地が確保できるだけではなく、“育ててもらえる地域”を求めているということです。自治体の支援が届いているか、相談できる場所があるか、研修が実用的か。このあたりの品質が、就農地選びに直結しています。
■“順位づけの結果”から見える:実家・農地は「第一候補」になりやすい
調査では、就農地を選んだ理由について、第1位・第2位・第3位のどれに当てはまるかも尋ねています。この人数は、その理由が「最初に思い浮かんだ理由なのか」「2番手・3番手なのか」を表しています。

この順位づけの結果を見ると、いくつか特徴がはっきり浮き上がります。
「取得・賃借できる農地があった」→ 1位・2位・3位すべてで人数が多く、総合的に最重要の理由。
「実家があった」→ 特に“1位”として選ばれた人数が非常に多い。つまり、実家がある地域は「最初の候補地」として強く意識されやすい。
一方で、「自然環境がよかった」「その地域を以前からよく知っていた」といった項目は、1位よりも2位・3位として選ばれることが多い傾向があります。これは、こうした要因が 「最終決定の主因ではなく、候補を後押しする要素として働いている」 と読めます。
複数回答の“選択率”としてよく挙げられる理由と、順位づけの“第一候補”として選ばれる理由は必ずしも同じではありません。両方を見比べることで、「よく選ばれるが決め手ではない理由」 と「本命として挙がる理由」を切り分けて理解できます。
■就農地選択は5つの軸で整理できる
これらの数値を整理すると、新規就農者の判断基準は次の 5つの軸 に集約されます。
① 農地(借りられるかどうか)
すべての土台。空いている農地、借りられる条件、地権者の状況。ここがクリアできない地域は、どれだけ魅力的でも候補に入らない。
② 行政支援・研修
「支援制度があるか」ではなく、“使える支援や研修が実際に動いているか” が判断材料になる。見せ方と実績が重要。
③ 自然環境
自然の良さは前提条件に近いが、それだけでは弱い。作物との相性、気象条件、獣害や病害虫リスクまで含めて判断される。
④ 地縁・家族
実家、知っている地域、家族の実家の近さなど。特に「実家」は第1候補として強く、生活基盤との接続が大きな影響を持つ。
⑤ アクセス・仲間・相談先
農業仲間、指導体制、販売先、都市へのアクセス。“就農後に孤立しないかどうか”に関わるため、地味だが重要な要素。
■このデータから、就農希望者は何をすべきか
就農希望者への示唆
まずは「農地が確保できる場所」を最優先で探す
次に「行政支援・研修」の実績を調べる
自然環境は“雰囲気”ではなく“データ”で判断する
地縁がないなら、長期研修・地域おこし協力隊などで“土地勘”を意図的に作るべき
就農地選択は、感覚ではなく、複数の要因を冷静に比較したうえでの現実的な判断です。農地・支援体制・研修・環境・地縁のバランス次第で、地域にとっても、就農者にとっても、結果が大きく変わります。
今回のデータは、就農希望者にとっては道しるべとなります。あなたの地域が「選ばれる就農地」になるためには、この5つの軸を整えることが確実な一歩になります。
※本記事のデータは、全国農業会議所『新規就農者の就農実態に関する調査結果(2021年度)』(https://www.be-farmer.jp/uploads/statistics/YV447s7CQjwBYJ3OtEht202203231858.pdf)および2013・2016年度調査の集計表をもとに作成しています。


