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新規参入就農者は30代・40代が中心外部から農業に入る人の実態と、若年層が少ない理由


農業の担い手不足が課題となる中で、外部から農業に入る「新規参入就農者」への期待は高まっています。

新規参入就農者とは、農家出身ではない人などが、農業の外側から新たに農業経営を始めるケースを指します。

親元の農業を継ぐのではなく、農地、資金、技術、販路、地域との関係を一から築きながら農業に入る層です。

いわば、「ゼロから農業を始める人たち」です。

令和5年の新規参入就農者は3,830人でした。

この数字は、農業の担い手を外部から確保するうえで重要です。しかし、年齢構成を詳しく見ると、新規参入就農には明確な特徴と課題があります。

今回は、新規参入就農者の年齢構成をもとに、外部から農業に入る人の実態と、若年層の参入が限られている背景について整理します。


1. 新規参入就農者とは、外部から農業に入る人たち

新規就農者といっても、すべて同じではありません。

大きく分けると、既存の農家を継ぐ親元就農、自分で農業経営を始める自営就農、農業法人などに雇われる雇用就農、そして外部から農業に入る新規参入就農があります。

その中でも新規参入就農は、農業の担い手確保において特に注目されるルートです。

なぜなら、既存農家の継承だけでは農業の担い手を十分に確保できないからです。

農家出身者だけでなく、会社員、公務員、自営業者、都市部の生活者、異業種経験者などが農業に入ることができれば、農業の担い手の裾野は広がります。

しかし、新規参入就農は簡単ではありません。

農地を探す必要があります。技術を身につける必要があります。機械や施設をそろえる必要があります。資金を確保する必要があります。販路を作る必要があります。地域の信頼を得る必要があります。

親元就農のように、すでに農地や機械、地域のつながりがあるわけではありません。

そのため、新規参入就農は、農業への入口として重要である一方、最もハードルの高い就農形態の一つでもあります。


2. 令和5年の新規参入就農者は3,830人

令和5年の新規参入就農者は3,830人でした。

この人数をどう見るかは重要です。

外部から農業に入る人が一定数いることは確かです。しかし、日本全体の農業の担い手不足を考えると、3,830人という規模は決して大きいとは言えません。

農業では、高齢化、後継者不足、離農、耕作放棄地の増加などが問題になっています。

その中で、外部からの新規参入者は貴重な存在です。

ただし、現状の人数だけで農業全体の担い手不足を補うのは難しいと考えるべきです。

つまり、新規参入就農は重要なルートですが、現時点ではまだ規模が限られているということです。


3. 中心は30代・40代

年齢階級別に見ると、新規参入就農者の中心は30代・40代です。

最も多いのは40〜49歳の1,070人です。次いで多いのが30〜39歳の1,040人です。

この2つの年代で、新規参入就農者の大きな部分を占めています。

さらに、50〜59歳も590人と一定数います。

この構成から分かるのは、新規参入就農の主力が、社会経験を積んだ現役世代であるということです。

農業に入る人は、必ずしも学生や20代前半の若者ばかりではありません。

むしろ、会社員などとして一定の社会経験を積み、資金や生活設計をある程度考えたうえで、30代・40代から農業に入る人が多い構造になっています。

これは自然な面もあります。

新規参入就農には、資金力、判断力、経営感覚、地域との交渉力が必要です。農地を借りるにも、制度を使うにも、事業計画を作るにも、一定の社会経験が役立ちます。

そのため、30代・40代が中心になるのは、ある意味では現実的な結果です。


4. 20代の新規参入は限定的

一方で、若年層の新規参入は限られています。

20〜29歳は480人です。30代・40代と比較すると、かなり少ない人数です。

さらに、15〜19歳はわずか10人です。

この数字から見ると、10代で新規参入就農するケースはほとんどないと言えます。

20代も一定数は存在しますが、新規参入就農の中心とは言いにくい状況です。

これは、若い世代に農業への関心がないという単純な話ではありません。

むしろ、新規参入就農という形で農業に入るには、若年層にとって負担が大きいと見るべきです。

若い世代は、自己資金が十分でない場合が多くなります。農地を借りる信用もまだ弱い場合があります。農業技術もこれから身につける必要があります。地域とのつながりもありません。生活費を確保しながら研修や独立準備を進める必要があります。

つまり、農業をやりたいと思っても、いきなり新規参入就農を選ぶにはハードルが高いのです。

若い世代にとっては、まず農業法人に雇用就農する、研修制度を使う、地域おこし協力隊などを経由する、といった段階的なルートの方が現実的な場合があります。


5. 高齢層からの参入も一定数ある

新規参入就農では、60代以上の参入も一定数見られます。

60〜64歳は210人、65歳以上は430人です。

自営就農全体と比べれば、高齢層が最大のボリュームというわけではありません。しかし、人生の後半から農業に入る人も存在しています。

これは、定年後のセカンドキャリア、移住、半農半X、趣味と実益を兼ねた小規模農業など、さまざまな背景があると考えられます。

ただし、新規参入就農の中心はあくまで30代・40代です。

高齢層からの参入は一定数あるものの、担い手構造全体を支える主力というよりは、補助的な位置づけに近いと考えられます。

また、高齢からの参入では、体力、投資回収期間、技術習得期間、事業承継の見通しなど、若い世代とは別の課題があります。

農業は長期的な経営です。

高齢から新規参入する場合は、どの程度の規模で、何年続けるのか、どこまで投資するのかを慎重に考える必要があります。


6. 新規参入就農は重要だが、担い手不足の決定打にはなっていない

新規参入就農は、外部から農業に人を呼び込む重要な経路です。

しかし、今回のデータを見る限り、現状では規模も限られており、年齢構成にも偏りがあります。

特に重要なのは、若年層の参入が少ないことです。

農業の将来を考えるなら、若い世代が農業に入るルートを増やすことは重要です。しかし、新規参入就農という形だけで若年層を増やすのは簡単ではありません。

なぜなら、新規参入には複数の壁があるからです。

初期投資の壁。農地確保の壁。技術習得の壁。販路づくりの壁。地域との関係づくりの壁。生活費の壁。制度活用の壁。

これらを一人で乗り越えるのは負担が大きく、特に若い世代には厳しい条件になります。

そのため、担い手政策では、新規参入者を増やすだけでなく、参入後に定着できる仕組みを作る必要があります。

7. 自営就農・雇用就農・新規参入就農は分けて見るべき

農業の担い手を考えるときには、「新規就農者」という言葉だけで一括りにしないことが重要です。

自営就農、雇用就農、新規参入就農では、年齢構成も役割も異なります。

自営就農は、既存農家の継承や高齢層の参入を含みやすい傾向があります。雇用就農は、農業法人などに就職・転職する形で、若年層や現役世代の入口になりやすい傾向があります。新規参入就農は、外部から農業経営に入るルートですが、現状では30代・40代が中心です。

この違いを見ずに、「新規就農者が増えた」「減った」とだけ見ると、担い手構造を誤って理解する可能性があります。

重要なのは、どの年代が、どの経路から農業に入っているのかです。

若い人を増やしたいのか。外部から経営者を呼び込みたいのか。農業法人の労働力を確保したいのか。地域農業の継承を進めたいのか。

目的によって、必要な支援策は変わります。


8. 初期投資の負担軽減が、新規参入の重要課題になる

新規参入就農を増やすうえで、特に重要なのが初期投資の負担軽減です。

外部から農業に入る場合、農地や機械、施設、資材を新たにそろえる必要があります。

露地野菜でも、農機具、資材、出荷体制、運転資金が必要です。施設園芸であれば、ハウス、灌水設備、環境制御、加温設備など、さらに大きな投資が必要になります。果樹であれば、収益化までの期間を耐える資金が必要です。

つまり、新規参入者にとって、初期投資は最大の壁の一つです。

この負担をどう下げるかが、新規参入を後押しするうえで重要になります。

国や自治体には、就農支援、補助金、融資制度、設備導入支援など、さまざまな制度があります。

例えば、自治体によっては、農業用設備やスマート農業機器の導入を支援する補助制度があります。豊橋市の「アグリテック導入支援補助金」のように、GO SWITCHなどの設備導入に対して補助率2分の1、上限50万円といった支援が用意されている場合もあります。

ただし、補助制度は年度や自治体によって内容が変わります。対象機器、補助率、上限額、申請期間、採択条件も異なります。

そのため、就農計画を立てる段階で、地域ごとの最新の公募情報を確認する必要があります。

支援制度を使えるかどうかで、初期投資の負担は大きく変わります。


9. 制度を前提にしつつ、制度に依存しすぎない計画が必要

補助金や支援制度は、新規参入就農にとって重要です。

しかし、制度を前提にしすぎるのも危険です。

補助金は、申請すれば必ず受けられるものではありません。年度によって制度内容が変わることもあります。対象経費が限られる場合もあります。採択前に購入したものは対象外になる場合もあります。自己負担分は必ず残ります。

そのため、補助制度は「使えれば有利になるもの」として計画に組み込むべきですが、「これがないと成立しない」という状態は危険です。

新規参入就農では、自己資金、融資、補助金、運転資金、生活費を総合的に考える必要があります。

特に、若年層の参入を広げるには、制度の情報提供だけでは不十分です。

研修。農地あっせん。住まいの確保。生活費支援。販路づくり。設備導入支援。地域の受け入れ体制。

これらを組み合わせて、初めて新規参入しやすい環境になります。


まとめ:新規参入就農は30代・40代が中心で、若年層の入口はまだ狭い

令和5年の新規参入就農者は3,830人でした。

年齢構成を見ると、中心は30代・40代です。40〜49歳が1,070人、30〜39歳が1,040人と、社会経験を積んだ現役世代が主力になっています。

一方で、20代は480人、15〜19歳は10人にとどまっています。

この数字から見ると、新規参入就農は、若年層が最初のキャリアとして選ぶルートにはまだなりきれていません。

農業に外部から入るには、資金、農地、技術、販路、地域との関係など、多くの壁があります。特に若い世代にとって、ゼロから農業経営を始める負担は大きいと考えられます。

そのため、担い手確保を考えるうえでは、自営就農、雇用就農、新規参入就農を分けて見る必要があります。

雇用就農は、若い世代が農業に入る入口になりやすい。新規参入就農は、外部から農業経営者を呼び込む重要なルートだが、現状では30代・40代が中心。自営就農は、既存農家の継承や高齢層の参入を含みやすい。

それぞれの役割は異なります。

新規参入就農を広げるには、特に初期投資の負担軽減が重要です。補助金や融資制度、設備導入支援、農地あっせん、研修制度を組み合わせ、外部から農業に入る人が現実的に経営を始められる環境を整える必要があります。

新規参入就農は、農業の担い手不足を補ううえで重要な経路です。

しかし、現在の人数と年齢構成を見る限り、それだけで担い手問題を解決できる段階にはありません。

だからこそ、若年層には雇用就農や研修を通じた段階的な入口を、30代・40代の新規参入者には初期投資と農地確保を支える制度を、それぞれ整える必要があります。

農業に外部から人を呼び込むには、「農業をやりたい人」を待つだけでは不十分です。

農業を始められる条件を、制度と地域の両面から整えることが必要です。


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