新規就農で農家を引き継ぐ人は何%?有形資産・無形資産の継承実態まとめ
- ishikawa030
- 20 時間前
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「離農する農家を引き継げば、農地も機械も販路も“セット”で手に入るのでは?」
新規就農を考えていると、一度はこう思うはずです。
この記事では、全国農業会議所の「新規就農者の就農実態に関する調査結果(令和6年度)」をもとに、新規就農者が実際にどのような**経営継承(事業承継)**をしているのかを数字で整理します。
1. 経営継承している新規参入者はほとんどいない

まず、「そもそも第三者経営継承をしている人がどれくらいいるのか」を見ます。
新規参入者について、離農農家からの継承内容は次の3つに分かれています。
経営資産をまとめて引き継いでいない→ 1,196人(85.6%)
有形資産のみをまとめて引き継いだ→ 137人(9.8%)
有形資産+無形資産をまとめて引き継いだ→ 65人(4.6%)
つまり、
有形・無形を含めて、離農農家から何らかの経営継承をしている新規参入者は全体の14.4%にとどまる
ということです。
「誰かの農家をそのまま引き継いで就農する」というイメージはわかりやすいのですが、実際には8〜9割の新規参入者は、まとめての事業承継ではなく、別ルートで就農していると見るべきです。
経営継承は「特別な一部のルート」であって、今のところは多数派の選択肢ではありません。
2. 農地・機械・施設は7〜8割が引き継げている

次に、経営継承をした人たちがどんな有形資産を引き継いでいるかを見ていきます。
ここでは、
有形+無形の資産をセットで継承した人(以下「有形無形継承者」)
有形資産だけを継承した人(以下「有形のみ継承者」)
の2グループに分けて集計されています。
有形無形継承者
農地:81.5%
機械:86.2%
施設:76.9%
有形のみ継承者
農地:80.3%
機械:70.5%
施設:73.5%
どちらのグループでも、農地・機械・施設の継承率はおおむね7〜8割台です。経営継承という選択をした時点で、
まとまった農地
トラクターなどの機械
ハウス等の施設
は、かなりの確率で一緒に引き継げていると言えます。
細かく見ると、機械の継承率に差があり、
有形無形継承者:86.2%有形のみ継承者:70.5%
となっています。無形資産まで含めて引き継ぐパターンの方が、より「農家一式」に近い形で受け継いでいる傾向が見て取れます。
3. 無形資産はスカスカ:経営ノウハウは3割しか継承されていない

問題はここからです。有形無形継承者について、無形資産の継承状況を見てみます。
生産技術:67.7%
販路:63.1%
人脈:46.2%
経営管理・ノウハウ:32.3%
有形資産(農地・機械・施設)の継承率(約8割前後)と比べると、無形資産の数字は一段トーンダウンします。
特に気になるのは次の2点です。
販路の継承率が63.1%にとどまる
3人に2人は販路をある程度引き継げていますが、逆に言うと残りの約4割は、販売先を自分で作り直している可能性が高いということです。
「離農農家を引き継げば販路もそのままついてくる」と期待すると、実態とのギャップが出ます。
経営管理・ノウハウの継承率が32.3%しかない
帳簿のつけ方、コスト計算、補助金・制度資金の使い方、従業員管理や労務など、地味だけど重要な「経営の型」は、3人に1人程度しか十分には引き継げていないという見方ができます。
結果として、
「農地と機械はしっかり引き継げているが、経営のやり方そのものはかなり自分で組み立て直している」
新規就農者が少なくない、という構図が見えてきます。
4. これから就農する人が押さえておきたいポイント
数字を見て終わりにしても意味がないので、これから就農を目指す人向けに、現実的なチェックポイントを整理します。
「第三者経営継承」はレアケースであることを前提にする
新規参入者のうち、離農農家から何らかの形で経営継承をしているのは**14.4%**です。
親元就農で実家の経営を継ぐ
空き農地を借りてゼロから始める
第三者経営継承でスタートする
この3つを並べて考えたとき、第三者経営継承だけに期待して就農計画を組むのはリスキーです。
「うまく出会えればラッキー」ぐらいに見ておいた方が現実的です。
離農農家を引き継ぐ話が出たとき、農地の面積や機械の型番・価格だけ確認して終わるのは危険です。
最低限、次のあたりは数字や名前レベルで確認した方がいいです。
主な販売先と取引条件(出荷先、数量、単価、契約の有無 など)
どの作業をどのような手順で行っているか(栽培マニュアル、帳票類があるかどうか)
地域で頼れる人・団体は誰か(JA、農業委員、仲買、資材業者 など)
ここを曖昧なままにすると、結果的に「有形資産だけ継承」の延長線上になりがちです。
4-3. 経営ノウハウは「もらうもの」ではなく「自分で鍛えるもの」と割り切る
経営管理・ノウハウの継承率は32.3%。数字だけ見れば、7割近くは自分で学び直していると考えるべきです。
だからこそ、
研修先やコンサル、先輩農家の勉強会など、「経営を学ぶ場」を別に確保しておく
会計ソフトの使い方や、最低限の原価計算の考え方は、就農前からざっくり押さえておく
このあたりを準備しておくだけでも、「経営継承したのに経営で詰む」という事態はかなり避けやすくなります。
5. まとめ:経営継承は“近道”ではあるが、ゴールではない
今回のポイントをざっくりまとめると、
離農農家からの経営継承をしている新規参入者は14.4%と少数派
経営継承をしている人は、農地・機械・施設といった有形資産は7〜8割が継承できている
一方で、生産技術や販路、人脈、経営管理ノウハウなどの無形資産は継承率が下がる
特に経営ノウハウは32.3%と低い
経営継承はたしかに「何もないところから始めるよりは、スタートラインを少し前に出してくれる仕組み」です。ただし、それで全てが解決する“魔法のルート”ではない、というのがデータから見える現実です。
これから新規就農を目指す人は、
経営継承を「ゴール」ではなくスタートラインのひとつとして捉えること
特に無形資産(販路・人脈・経営ノウハウ)をどう補うかを、就農前から設計しておくこと
この2点だけ頭に入れておけば、実際に継承の話が来たときにも、数字に振り回されずに判断しやすくなるはずです。


