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異業種から農業参入する前に知りたい就農地・移住・家族構成の実態


新規就農を検討する際は、栽培する作物や導入設備だけでなく、「どの地域で始めるか」「移住するか」「誰が日々の作業を担うか」を具体化する必要があります。農地や施設が確保できても、住居、家族の生活、販路、通勤、相談先といった条件が整わなければ、事業計画どおりに運営できない可能性があるためです。

本記事では、一般社団法人全国農業会議所・全国新規就農相談センターが2025年3月に公表した『新規就農者の就農実態に関する調査結果-令和6年度-』をもとに、新規参入者と親元就農者の属性を比較します。


就農地域の違いは、就農経路の違いを示している

新規参入者の就農地は、関東・東山が26.8%で最も高く、九州18.8%、東海10.5%が続きます。東北と近畿はいずれも9.7%、中国は8.0%、四国は6.0%、北海道は5.6%です。

一方、親元就農者は東北26.4%、九州25.7%で、両地域を合わせると半数を超えます。次いで関東・東山13.7%、四国11.7%となっています。

親元就農者では、就農前住所が関東・東山だった人は29.1%ですが、実際の就農地が関東・東山だった人は13.7%です。この差から地域間の移動があったことは確認できますが、実家への帰郷、農地の継承、家族事情など、移動理由まではこの調査から断定できません。

両者の地域分布は、どちらが有利かを示すものではありません。新規参入者と親元就農者では、就農に至る経路や利用可能な地域資源が異なるため、経営設計の前提条件として分けて考える必要があります。

新規参入者の84.1%は農家出身ではない

新規参入者では、「農家出身ではない」が84.1%を占めます。これに対し、親元就農者では「農家出身である」が73.0%です。農家出身ではない親元就農者は8.8%にとどまり、両者の差は75.3ポイントあります。

この違いから、農地、既存設備、栽培技術、地域内の人脈、家族との役割分担など、就農時の初期条件が異なる可能性がうかがえます。ただし、農家出身者が実際に農地や設備を継承しているか、新規参入者がどの程度の支援を受けているかまでは、この数値だけでは分かりません。

新規参入者は、農地の確保だけでなく、資材の購入先、設備の修理先、技術相談先、出荷先などを個別に構築する必要があります。法人参入でも、現地責任者を採用するだけではなく、地域との接点を事業計画に組み込むことが重要です。

新規参入者の61.6%は従来の地域ブロック内で就農

新規参入者のうち、就農前と同じ都道府県内で就農した人は37.7%、別の都道府県ではあるものの同じ地域ブロック内で就農した人は23.9%です。合計すると61.6%が、就農前に暮らしていた地域ブロック内で就農しています。残る38.4%は、他の地域ブロックへ移動した計算になります。

親元就農者では、同じ都道府県内が42.7%、同一地域ブロック内の別都道府県が14.6%で、合計57.3%です。他地域ブロックへの移動も42.7%あります。

新規参入者であっても、全国のどこへでも移動する人が中心とは限りません。既存の生活圏、家族との距離、交通網、土地勘、相談先へのアクセスが、就農候補地を検討する際の現実的な条件になっている可能性があります。

移住を伴う就農では、農地価格だけでなく、住居費、通勤時間、医療や教育環境、配偶者の就業先、販路まで確認する必要があります。法人が地域外人材を採用する場合も、住宅と職場だけでなく、家族を含む定着条件の整備が必要です。


新規参入者は30~49歳が中心

新規参入者の就農時年齢は、30~39歳が44.8%、40~49歳が33.9%です。両区分を合計すると、30~49歳が78.7%を占めます。29歳以下は13.0%、50~59歳は6.8%です。

親元就農者も30~39歳が41.3%で最も高い一方、29歳以下が27.3%を占めます。29歳以下の割合は、親元就農者の方が新規参入者より14.3ポイント高くなっています。

年齢構成から、資産、体力、所得、成功率を推測することはできません。ただし、30代や40代で新規参入する場合、住宅費、子育て費用、既存の借入れなど、農業以外の生活責任を抱えている場合があります。設備投資額だけでなく、生活費を含めた資金計画が必要です。

性別は、新規参入者が男性86.2%、女性13.7%、親元就農者が男性89.4%、女性10.2%です。回答者が男性中心であることは確認できますが、性別による農業への適性や能力差を示す数値ではありません。

家族人数と農業に従事できる人数は異なる

同居世帯員数は、新規参入者が平均3.0人、親元就農者が平均3.9人です。ただし、同居人数が多いことと、農業労働力が多いことは同じではありません。

配偶者がいる割合は、新規参入者74.8%、親元就農者71.3%です。さらに、配偶者がいる回答者のうち、配偶者も一緒に農業をしている割合は、新規参入者47.5%、親元就農者40.6%でした。

ここでの47.5%と40.6%は、回答者全体ではなく、「配偶者がいる回答者」を母数とした割合です。また、配偶者が他の仕事に従事している割合は、新規参入者30.2%、親元就農者37.5%です。

配偶者がいるという理由だけで、常時働ける農業従事者として計画に組み込むのは危険です。家族の協力は、「手伝えるか」ではなく、週に何時間確保できるか、繁忙期にどの作業を担当できるかまで数値化する必要があります。

就農・参入前に確認すべき項目

新規就農者は、一度、家族労働力をゼロまたは限定的と仮定して作業計画を作るべきです。法人参入では、地域外から採用する従業員について、本人の住居だけでなく、通勤、配偶者の就業、家族の生活、地域との接点まで検討する必要があります。

就農候補地ごとに、農地と住居の費用、出荷先までの移動時間、支援制度、相談先を整理します。そのうえで、本人、配偶者、家族が確保できる週当たりの作業時間、雇用が必要になる月、必要人数を明確にします。

灌水、換気、見回り、記録など、繰り返し発生する定型作業は、自動化候補として洗い出します。設備投資では、初期費用、月次固定費、借入返済額、予備資金を分け、一括導入だけでなく、必要箇所から段階的に導入する方法も検討する必要があります。

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出典:一般社団法人全国農業会議所・全国新規就農相談センター『新規就農者の就農実態に関する調査結果-令和6年度-』(2025年3月)

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