イチゴ高設栽培の灌水管理を効率化|日射比例灌水と後付け自動化の導入ポイント
イチゴの高設栽培では、地面から離れた栽培ベッドで作物を育てるため、培地の水分管理が重要になります。
土耕栽培と異なり、培地の種類や容量によっては保水できる水分量が限られるため、灌水のタイミングや回数が生育に影響します。
特に、ヤシガラ培地やピートモスなどを使用する場合には、培地の特性を踏まえた給液管理が必要です。
例えば、
・晴天日には培地が乾きやすい・曇天日には水分消費が少なくなる・生育段階によって必要な水分量が変わる・培地の保水性によって適切な灌水回数が異なる・灌水量によって排液量や肥料成分の動きが変わる
といった特徴があります。
そのため、イチゴの高設栽培では、毎日同じ量の水を与えるだけでなく、作物や環境に合わせた灌水管理が重要になります。
■タイマー灌水だけでは天候変化に対応しにくい
高設栽培では、タイマーを利用して灌水している農場もあります。
例えば、
午前9時に3分間
午前11時に3分間
午後1時に3分間
というように、決められた時刻に灌水する方法です。
タイマー灌水は設定が比較的簡単で、一定の作業を自動化できるというメリットがあります。
しかし、天候が大きく変化した場合には、設定した灌水量が必ずしも適切とは限りません。
晴天日には日射量が増加し、蒸散が活発になる傾向があります。
一方、曇天日には日射量が少なくなり、水分消費も減少することがあります。
それにもかかわらず、毎日同じ時間に同じ量を与え続けると、培地の水分状態が想定から外れる可能性があります。
そこで検討したいのが、日射量に応じて灌水タイミングを調整する方法です。
■日射比例灌水とは何か
日射比例灌水とは、日射量を灌水の判断材料として利用する制御方法です。
一般的には、一定期間に受けた日射量を積算し、その値が設定した基準に達すると灌水を実行します。
例えば、
日射量を計測する↓積算日射量が設定値に達する↓灌水設備を作動させる↓積算値をリセットして次の灌水を判断する
という仕組みです。
日射が強い日には設定値に早く到達するため、灌水回数が増えやすくなります。
反対に日射が弱い日には、灌水間隔が長くなる傾向があります。
これにより、固定タイマーだけでは対応しにくい天候変化を、灌水制御へ反映できます。
ただし、日射量と作物の吸水量が完全に一致するわけではありません。
培地の水分状態、温度、湿度、生育段階なども関係するため、日射比例灌水は栽培管理を支援する方法の一つとして考えることが重要です。
■高設栽培では「少量多回数の灌水」も選択肢になる
イチゴの高設栽培では、一度に大量の水を与える方法だけでなく、少量の水を複数回に分けて与える方法もあります。
特に培地容量が小さい場合、一度に多くの水を与えても、培地が保持できない分は排液として流出します。
一方、灌水間隔が長すぎると、培地の水分が不足する可能性があります。
そこで、栽培条件に応じて灌水を細かく分けることで、培地の水分変動を抑えやすくなる場合があります。
ただし、少量多回数の灌水がすべての農場に適しているわけではありません。
培地の種類、栽培ベッドの容量、点滴チューブの吐出量、排液状況などを確認した上で、適切な回数と給液量を設定する必要があります。
■複数の栽培ベッドを同時に灌水できない場合もある
イチゴの高設栽培では、ハウス内に複数の栽培ベッドが設置されています。
農場の規模が大きくなると、灌水系統を分けて管理することもあります。
例えば、
A系統:ハウス東側
B系統:ハウス中央
C系統:ハウス西側
という構成です。
このとき、すべての系統を同時に動かすと、水圧やポンプ能力の制約によって、十分な給液ができない場合があります。
そこで利用されるのが、系統を順番に動かす制御方法です。
A系統へ灌水↓B系統へ灌水↓C系統へ灌水
というように、順番に灌水を実行します。
この方法であれば、水源やポンプの能力に応じた給液管理を行いやすくなります。
ただし、各系統の流量や灌水時間を考慮しなければ、系統間で給液量に差が生じる可能性があります。
そのため、複数系統の制御では、灌水順序だけでなく各系統の給液量を確認することが重要です。
■給液量だけでなく「排液」も確認したい
高設栽培の灌水管理では、与えた水の量だけを確認すればよいわけではありません。
重要な指標の一つが排液です。
例えば、
「どれだけ給液したか」
「どれだけ排液されたか」
「排液のECやpHはどうなっているか」
といった情報です。
排液の状態を確認することで、培地内の水分や肥料成分の管理状況を判断する材料になります。
特に養液栽培では、水分だけでなく肥料成分の供給も重要です。
ただし、灌水のON・OFFを自動化することと、ECやpHを自動調整することは別の機能です。
既存の液肥混入機や養液供給装置を利用している場合には、給液制御と肥培管理を分けて設備構成を検討することが必要です。
■既存の灌水設備を活かして自動化できる場合がある
イチゴの高設栽培を行っている農場では、すでにポンプや配管、点滴チューブ、灌水制御盤などが設置されていることがあります。
その場合、設備全体を交換する必要があるとは限りません。
例えば、
既存のポンプ
既存の配管
既存の電磁弁
既存の灌水制御盤
を活用しながら、制御部分だけを追加する方法があります。
GREEN OFFSHOREの「GO SWITCH」は、既存の農業設備を活用した後付け型の遠隔制御・自動化システムです。
灌水設備の遠隔操作に加えて、スケジュール運転や日射比例灌水などに対応しています。
また、複数の灌水系統を順番に動かすリレー灌水機能も備えています。
GO SWITCH
既存設備との接続可否は、制御盤のメーカーや型番、電磁弁の仕様などによって異なります。
そのため、現在使用している設備を確認した上で、後付けによる自動化を検討することが重要です。
■日射センサーを新しく設置しない方法もある
日射比例灌水を導入する場合、一般的には日射量を計測するセンサーを利用します。
しかし、日射センサーを設置するには、機器の購入や設置、配線などが必要になる場合があります。
そこで、別の選択肢となるのが気象予測データの活用です。
GREEN OFFSHOREの「このあとてんき」は、日射量や気温などの気象予測情報を提供しています。
このあとてんき
GO SWITCHでは、日射比例灌水の情報源として、このあとてんきの予測日射量を利用する構成にも対応しています。
これにより、現地に日射センサーを新設せずに日射比例灌水を導入できる場合があります。
ただし、予測値と実際の日射量には差が生じることがあります。
特に雲の変化が激しい日などは、予測値だけでは実際の環境を十分に反映できない可能性があります。
そのため、導入後も作物や培地の状態、排液状況などを確認しながら設定を調整することが重要です。
■農業法人では「灌水条件の標準化」も重要
イチゴを大規模に栽培する農業法人では、複数のハウスを管理している場合があります。
その際、灌水管理が特定の担当者の経験だけに依存していると、担当者の変更や栽培規模の拡大に対応しにくくなります。
例えば、
「このハウスは朝に少し多めに灌水する」
「こちらのベッドは乾きやすい」
といった経験的な判断が、担当者本人にしか分からない状態です。
そこで、灌水条件を数値として記録し、管理方法を整理することが重要になります。
例えば、
・灌水開始時刻・1回あたりの給液時間・積算日射量の設定値・系統ごとの灌水順序・給液量と排液量・設定変更の履歴
などです。
こうした情報を共有することで、担当者が変わっても管理方針を引き継ぎやすくなります。
ただし、ハウスごとに栽培条件が異なる場合には、すべて同じ設定にするのではなく、管理方法を標準化しながら、必要な設定は圃場ごとに調整することが重要です。
■導入前には灌水設備の仕様を確認する
イチゴ高設栽培の灌水自動化を検討する場合、まず現状の設備構成を整理します。
確認したい項目は次のとおりです。
① 現在の灌水方法
手動バルブなのか、タイマー制御なのか、既存の灌水制御盤を利用しているのか。
② 灌水系統の数
何系統に分かれており、同時灌水が可能なのか。
③ ポンプと電磁弁の仕様
電源、流量、水圧、制御方式など。
④ 培地と栽培方式
ヤシガラ培地、ピートモスなどの種類や培地容量。
⑤ 現在の給液管理
灌水時間、回数、給液量、排液の確認方法。
⑥ 導入したい制御機能
遠隔操作、スケジュール運転、日射比例灌水、複数系統の順次制御など。
これらを整理することで、現在の設備をどこまで利用できるのか、追加で何が必要なのかを判断しやすくなります。
■イチゴの灌水自動化は「何を改善したいか」から考える
イチゴの高設栽培で灌水を自動化するとき、最初からすべての機能を導入する必要はありません。
例えば、
「毎日の灌水操作を減らしたい」
という農場であれば、遠隔操作やスケジュール運転から始める方法があります。
「天候によって灌水量を調整したい」
という農場であれば、日射比例灌水が選択肢になります。
「複数の栽培ベッドを順番に灌水したい」
という農場であれば、複数系統の制御を検討します。
重要なのは、設備の機能を増やすことではありません。
現在の栽培管理で何が問題になっているのかを整理し、その課題に合った制御方法を選ぶことです。
■GREEN OFFSHOREのスマート農業ソリューション
GREEN OFFSHOREでは、既存設備を活かした後付け型の農業設備の遠隔化・自動化システムを提供しています。
GO SWITCHでは、灌水設備の遠隔操作、スケジュール運転、日射比例灌水、複数系統のリレー灌水などに対応しています。
また、**GO SWITCH+(側窓モデル)**では、側窓の開閉を遠隔化・自動化することで、施設園芸の換気管理を支援します。
さらに、このあとてんきでは、日射量や気温などの気象予測情報を提供しています。
イチゴの高設栽培で灌水設備の自動化を検討する場合には、現在の灌水方式や制御盤の仕様を確認し、必要な機能から段階的に導入することが重要です。


