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田舎なら安く住めるとは限らない、就農時の住宅事情


新規就農を考えるとき、多くの人がまず意識するのは、栽培技術、農地、機械、施設、資金調達といった農業そのものに関わる準備です。

しかし、実際に農業を始めるうえで、意外と大きな課題になるのが「住まい」です。

農業は、農地だけあれば始められるわけではありません。その地域で生活し、毎日農地に通い、地域との関係を築きながら経営を続けていく必要があります。

そのためには、生活の拠点となる住宅を確保しなければなりません。

「田舎なら空き家が多いから、安く住めるのではないか」「家賃は都市部よりかなり抑えられるはず」「場合によっては、ほとんど無料に近い条件で住めるのではないか」

そう考える人もいるかもしれません。

しかし、実際のデータを見ると、新規就農者の住居費は決して無視できるものではありません。特に、実家や持ち家がない状態で就農する場合、家賃は毎月発生する固定費として、就農初期の資金繰りに大きく影響します。

今回は、全国農業会議所が公表した「新規就農者の就農実態に関する調査結果」をもとに、新規就農時の住宅事情と、住居コストの現実を整理します。


1. 新規就農では「住まいの確保」も大きな準備の一つ

新規就農というと、どうしても農業経営の準備に目が向きます。

どの作物を作るのか。どこで農地を借りるのか。どの機械や資材をそろえるのか。どのような販路を確保するのか。

これらは当然重要です。

しかし、それと同じくらい重要なのが、どこに住むかという問題です。

農業は、現場に近い場所で暮らす必要がある仕事です。特に、施設園芸、果樹、畜産、酪農などでは、日々の管理や急な対応が必要になる場面もあります。農地から遠い場所に住めば、移動時間や燃料費が増え、作業効率にも影響します。

また、家族で移住する場合は、住宅の広さ、学校、買い物、医療機関、地域との距離感なども関係してきます。

つまり、新規就農における住宅選びは、単なる生活上の問題ではありません。農業経営を安定して続けるための基盤でもあります。


2. 20代は実家、30代・40代は賃貸が多くなる

就農時の住居形態を見ると、年齢によって傾向が異なります。

29歳以下の若い世代では、「実家」に住みながら就農する人が比較的多く見られます。地元で農業を始める場合、実家を生活拠点にできるため、住居費を抑えやすくなります。

これは、新規就農初期の資金繰りにとって大きな利点です。

農業は、始めてすぐに安定した収入が得られるとは限りません。そのため、家賃がかからない、または低く抑えられることは、経営が軌道に乗るまでの期間を支える重要な条件になります。

一方で、30代以降になると、実家ではなく賃貸住宅を選ぶ人が増えます。

30代、40代で新規就農する人の中には、IターンやUターン、家族を伴う移住もあります。その場合、実家に住めるとは限らず、一戸建て住宅やアパートなどを借りて生活を始めるケースが多くなります。

特に家族がいる場合は、単に「安い家」を選べばよいわけではありません。生活に必要な広さ、子育て環境、通勤・通学、買い物、医療、地域との関係なども考慮する必要があります。

その結果、住居費は就農初期から毎月発生する固定費になります。

農業収入がまだ安定していない段階で、家賃、光熱費、車両費、生活費が同時に発生する。ここを甘く見ると、農業経営そのものを圧迫することになります。


3. 「田舎なら家賃1万円」はかなり少数派

田舎暮らしに対して、「空き家が多いから安く住める」というイメージを持つ人は少なくありません。

確かに、地域によっては都市部より家賃が安い場合があります。空き家バンクや自治体の支援制度を活用できるケースもあります。

しかし、データを見る限り、「月1万円未満で住める」というケースはかなり限られます。

調査結果では、家賃の分布で最も多いのは「3万円〜5万円未満」です。次いで多いのが「5万円〜10万円未満」です。

つまり、新規就農者の多くは、月3万円以上の家賃を支払っていることになります。

一方で、「1万円未満」の格安物件に住んでいる人は少数です。田舎だからといって、誰でも低家賃の住宅に入れるわけではありません。

ここはかなり重要です。

「地方には空き家が多い」という事実と、「新規就農者がすぐ住める良質な住宅が安く借りられる」という話は別です。

空き家があっても、すぐ住める状態とは限りません。水回り、屋根、床、電気、給湯設備、耐震性、害虫、駐車場、地域の合意など、実際に住むにはさまざまな条件があります。

家賃が安く見えても、修繕費や引っ越し費用、家具・家電の購入費がかかる場合もあります。場合によっては、結果的に通常の賃貸住宅と大きく変わらない負担になることもあります。

「田舎なら住居費はほとんどかからない」という前提で資金計画を立てるのは危険です。


4. 家賃は農業経営を圧迫する固定費になる

新規就農で見落としやすいのは、家賃が毎月必ず発生する固定費だという点です。

農業には、収入の波があります。作物が育つまで売上が立たない期間があります。天候不順や病害虫で収量が落ちることもあります。市場価格が下がることもあります。

一方で、家賃は売上に関係なく毎月発生します。

月3万円であれば年間36万円。月5万円であれば年間60万円。月8万円であれば年間96万円。

これに加えて、光熱費、車両費、燃料費、通信費、保険料、生活費、農業資材費、機械の維持費などが必要になります。

新規就農初期は、農業所得がまだ安定していません。そこに住居費が重なると、自己資金の減り方は想像以上に早くなります。

特に、30代・40代で家族を伴って就農する場合は、生活費全体が大きくなります。単身者よりも必要な住居面積が広くなり、教育費や車の維持費なども加わります。

そのため、住居費は「生活費だから農業経営とは別」と考えるべきではありません。

農業所得で生活する以上、住居費も含めて資金計画を立てる必要があります。


5. 空き家バンクや家賃補助は使えるが、過信は禁物

自治体によっては、新規就農者や移住者向けに、住まいに関する支援制度を用意している場合があります。

代表的なものとしては、空き家バンク、家賃補助、住宅改修補助、移住支援金などがあります。

これらは、新規就農者にとって有効な支援策です。特に、就農初期の固定費を抑えられる制度があれば、資金繰りの安定につながります。

ただし、制度を過信するのは危険です。

空き家バンクに登録されている物件が、必ずしも農地の近くにあるとは限りません。希望する地域に物件がない場合もあります。家族で住める広さや状態の物件が見つからないこともあります。

また、家賃補助や住宅改修補助には、対象者、対象地域、年齢、就農計画、居住年数、所得条件などの要件があることが多いです。申請すれば必ず使えるものではありません。

したがって、住まい探しでは、自治体の制度を確認しつつも、「補助が使えなかった場合」も想定しておく必要があります。

支援制度は資金計画を助ける材料ではありますが、制度ありきで就農計画を組むのは不安定です。


6. 就農前に確認すべき住まいのチェックポイント

新規就農を考える場合、住まいについても事前に具体的に確認しておくべきです。

まず、農地までの距離です。農地と住居が遠いと、日々の移動負担が大きくなります。燃料費や時間のロスも増えます。急な天候変化や設備トラブルへの対応も遅れます。

次に、家賃と初期費用です。毎月の家賃だけでなく、敷金、礼金、仲介手数料、引っ越し費用、家具・家電、修繕費も含めて考える必要があります。

さらに、住宅の状態も重要です。特に空き家の場合、見た目は住めそうでも、水回りや電気設備、雨漏り、断熱、害虫、耐震性などに問題があることがあります。

家族で移住する場合は、学校、病院、買い物、交通手段も確認が必要です。農業に集中するためには、家族が安心して暮らせる環境も欠かせません。

また、地域との関係も無視できません。農村部では、自治会、共同作業、水路管理、地域行事などがある場合があります。住まいを選ぶことは、その地域の生活圏に入ることでもあります。

住居は、単に寝る場所ではありません。新規就農後の暮らしと経営を支える拠点です。


まとめ:新規就農では「住居費」も経営計画に入れるべき

新規就農では、農地、機械、施設、資材、技術、販路に目が向きがちです。

しかし、住まいの確保も、就農前に詰めておくべき重要な課題です。

田舎だからといって、必ず安く住めるわけではありません。月1万円未満の格安住宅は少数派であり、多くの新規就農者は月3万円以上の家賃を負担しています。

家賃は、売上が少ない月でも必ず出ていく固定費です。農業所得が安定する前の段階では、この固定費が経営と生活を圧迫する可能性があります。

だからこそ、新規就農を考えるなら、農業経営の計画と同時に、住居費を含めた生活費の計画を立てる必要があります。

どこに住むのか。家賃はいくらか。農地までどれくらい近いのか。家族が安心して暮らせる環境か。補助制度や空き家バンクは使えるのか。補助が使えなくても資金が持つのか。

ここまで確認しておくことが、新規就農を安定して始めるための準備になります。

農業を続けるには、畑だけでなく、暮らしの土台も必要です。住まいのコストを甘く見ないこと。それも、新規就農で失敗しないための重要な視点です。

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