新規参入で見落としやすい「経営責任者への負担集中」と備え方
- ishikawa030
- 7月10日
- 読了時間: 4分

新規就農を考えるとき、「何歳くらいで農業を始める人が多いのか」「一人で経営判断を背負うことになるのか」「共同経営者はどの程度いるのか」は、かなり現実的な確認ポイントです。
農林水産省の「令和6年新規就農者調査」では、新規参入者は、土地や資金を独自に調達し、調査期日前1年間に新たに農業経営を開始した経営の責任者・共同経営者とされています。共同経営者には、夫婦でそろって就農した場合の配偶者や、複数の新規就農者が法人を新設して共同経営を行う場合の共同経営者が含まれます。
この調査は、既に新規参入した人を対象にしたものです。ただし、これから新規就農を考える人にとっても、就農前にどのような体制を整えるべきかを考える材料になります。
令和6年の新規参入者は3,750人、中心は30〜40代
令和6年の新規参入者は3,750人でした。このうち49歳以下は2,560人で、全体の約68.3%を占めています。

年齢階層別に見ると、最も多いのは40~49歳の1,120人、次いで30~39歳の1,020人です。20~29歳は420人、50~59歳は610人、60~64歳は190人、65歳以上は360人となっています。
この結果を見ると、新規就農は「若者だけ」の動きではありません。むしろ、30代・40代で他産業の経験を経て農業に入る層が大きいことが分かります。
30〜40代での新規参入では、農業技術の習得だけでなく、生活費、家族の役割、借入、農地や施設の管理、販路づくりなどを同時に考える必要があります。就農初期から、経営と現場作業の両方を担うことになりやすい点は、事前に見ておくべき課題です。
経営の責任者が約9割を占める
経営上の立場で見ると、経営の責任者は3,330人、共同経営者は420人です。新規参入者全体に占める割合は、経営の責任者が約88.8%、共同経営者が約11.2%となっています。

つまり、新規参入者の大半は、経営判断の中心を担う立場として農業を始めています。
農業経営では、日々の栽培管理だけでなく、資金繰り、設備投資、作付計画、出荷、販売、労務、記録管理など、多くの判断が連続します。特に就農初期は、経験不足の中で判断しなければならない場面も多くなります。
このため、新規参入では「農作業ができるか」だけでなく、「経営責任者として判断を抱え込みすぎない体制を作れるか」が重要になります。
ただし、この人数データだけで所得、経営規模、離農率、定着率までは判断できません。読み取れるのは、あくまで新規参入者の年齢、性別、経営上の立場の構成です。
共同経営者では女性が男性を上回る

性別で見ると、新規参入者は男性2,960人、女性760人です。全体では男性が多い一方、共同経営者に限ると男性160人、女性240人となり、女性の人数が男性を上回っています。
なお、性別内訳の合計と男女計が一致しない部分があり、性別・年齢不詳30人が含まれる点には注意が必要です。
ここで重要なのは、女性共同経営者を単純に「配偶者」と決めつけないことです。調査上の定義では、配偶者だけでなく、法人を新設して共同経営を行う場合のその他の共同経営者も含まれます。
共同経営者がいる場合でも、役割分担が曖昧なままでは、経営判断や作業負担が一部の人に集中する可能性があります。誰が栽培管理を担うのか、誰が販売や経理を見るのか、誰が設備や記録を管理するのかを、就農前から整理しておくことが重要です。
就農前に考えるべき備え
今回の結果からは、新規就農の準備では、年齢や資金だけでなく、経営体制の設計が重要であることが見えてきます。
特に経営の責任者として新規参入する場合、就農直後から多くの判断を求められます。作付け、栽培管理、出荷、販売、資金繰り、設備の修繕、天候対応など、現場と経営を同時に見る必要があります。
そのため、就農前には、経営責任者が何を判断するのか、共同経営者や家族がどこまで関与するのか、繁忙期の作業負担をどう分散するのかを確認しておくべきです。
また、灌水、換気、温度管理、記録作業など、毎日発生する作業をどこまで省力化できるかも検討対象になります。最初から大きな設備投資をする必要はありませんが、どの作業を人が担い、どの作業を機械や仕組みに任せるのかを考えておくことは、就農後の負担軽減につながります。
新規就農では、夢や意欲だけでなく、負担が集中しやすい部分を事前に把握することが重要です。経営責任者が一人で抱え込まない体制を作れるかどうかが、就農初期の大きな分かれ目になります。
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