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施設園芸における主要5品目(トマト、イチゴ、ナス、ピーマン、キュウリ)のブランディング事情について、実例を交えてレポート

トマトとイチゴは品種開発や地域ブランド化が活発に進んでいる一方、ナス、ピーマン、キュウリは「産地リレー」や「機能性」に頼る傾向があり、ブランディングの難易度やアプローチが異なります。


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🍅 トマト:高糖度・機能性による「指名買い」市場


トマトは施設園芸の中でも最もブランディングが進んでいる品目です。「高糖度(フルーツトマト)」と「機能性(GABAなど)」という明確な指標があり、消費者もブランド名で指名買いをする文化が根付いています。


ブランディングの特徴


  • 高糖度化: 水分ストレスを与える栽培技術により、糖度を極限まで高めて「フルーツ」として販売。

  • 機能性表示: GABAなどの成分を訴求し、健康志向の消費者にアピール。


実例


  1. アメーラ(静岡県)

    • 概要: 静岡県のサンファーマーズが開発。独自の灌水制限技術で高糖度を実現。「甘い(アメーラ)」という方言をネーミングに採用。

    • ソース: 株式会社サンファーマーズ


  2. OSMICトマト(全国展開)

    • 概要: オスミック・アグリによる、独自ソイル(土壌)とAI制御を用いた高糖度トマト。糖度別に「OSMIC FIRST」などのグレードを設け、最高級品は1粒数千円で販売。

    • ソース: OSMIC FIRST



🍓 イチゴ:品種と地域間競争による「高級ギフト」化


イチゴは各都道府県が威信をかけて品種開発を行っており、最も地域間競争が激しい品目です。「ご当地ブランド」としての地位が確立されており、贈答用としての需要も高いです。


ブランディングの特徴


  • 品種開発競争: 「あまおう(福岡)」、「とちおとめ(栃木)」に続く次世代品種(スカイベリー、とちあいか等)の開発。

  • ネーミングとパッケージ: 華やかで高級感のあるネーミングと、贈答用パッケージによる高付加価値化。


実例


  1. あまおう(福岡県)

    • 概要: 「あかい・まるい・おおきい・うまい」の頭文字から命名。海外(香港、台湾等)でも「AMAOU」として絶大なブランド力を持つ。

    • ソース: JA全農ふくれん


  2. あまりん(埼玉県)

    • 概要: 埼玉県オリジナル品種。全国いちご選手権で最高金賞を受賞するなど、味の評価でブランド化に成功。直売所での販売が中心で希少価値が高い。

    • ソース: 埼玉県公式「あまりん」紹介



🍆 ナス:伝統野菜と調理提案による「用途特化」


ナスは品種による味の差がトマトやイチゴほど明確ではないため、一般的なF1品種でのブランド化は難しい傾向にあります。そのため、「伝統野菜(在来種)」や「特定の食べ方(生食、漬物)」に特化したブランディングが主流です。


ブランディングの特徴


  • 伝統野菜の復権: 地域の在来種(京野菜など)としてのブランド化。

  • 食感の訴求: 「水ナス」のように生で食べられる、あるいは加熱するとトロトロになるといった食感を売りにする。


実例


  1. 泉州水なす(大阪府)

  2. とろとろ炒めナス(サントリー)

    • 概要: 種苗メーカー主導のブランディング。加熱すると肉質が非常に柔らかくなる特性を「とろとろ」という言葉で表現し、調理用途を提案。

    • ソース: サントリー「とろとろ炒めナス」



🫑 ピーマン:苦味低減とカラー化による「子供向け」戦略


ピーマンは「苦い」というイメージが強く、これを払拭する「苦くないピーマン」や、パプリカのような「カラーピーマン」による差別化が進んでいます。


ブランディングの特徴


  • ネガティブ要素の払拭: 「子供が食べられる」「苦くない」を最大の売りにする。

  • サイズと色: ジャンボピーマンやカラーピーマンとして、見た目のインパクトで差別化。


実例


  1. こどもピーマン(タキイ種苗)

    • 概要: 苦味が少なく、肉厚で甘みがある品種(ピー太郎)。「子供が喜んで食べる」というコンセプトで、ピーマン嫌い克服を訴求。

    • ソース: タキイ種苗「こどもピーマン」


  2. ちぐさ(各地)

    • 概要: 肉厚で大型のピーマン。苦味が少なくジューシーなため、通常のピーマンとは別枠の「肉厚ピーマン」として販売されることが多い。



🥒 キュウリ:鮮度と食感、「いぼ」への回帰


キュウリは鮮度落ちが早く、味の差別化が難しいため、最もコモディティ化しやすい品目です。近年は「いぼ」の鋭さ(鮮度の証)や、昔ながらの品種(四葉キュウリなど)の食感を見直す動きがあります。


ブランディングの特徴


  • 鮮度訴求: 「朝採り」や「いぼの鋭さ」を強調。

  • 品種回帰: ブルーム(白い粉)がある昔ながらのキュウリや、歯切れの良い「四葉(スーヨー)」系の復活。


実例


  1. 加賀太きゅうり(石川県)

    • 概要: 加賀野菜の一つ。通常のキュウリより太く、煮物や炒め物にも使えるという「用途の広さ」でブランド化。

    • ソース: 金沢市農産物ブランド協会


  2. 四葉(スーヨー)キュウリ(各地)

    • 概要: 表面にシワとイボが多く、皮が薄くて歯切れが良い品種。スーパーの主力である「ブルームレス」に対抗し、漬物やサラダでの「本来の美味しさ」を訴求。




まとめ:作物別ブランディング難易度と戦略


作物

難易度

主な戦略

キーワード

トマト

成分・機能性

高糖度、GABA、フルーツトマト

イチゴ

品種・地域

ご当地品種、贈答用、赤い宝石

ナス

伝統・食感

水ナス、とろとろ、在来種

ピーマン

ターゲット変更

苦くない、子供向け、ジャンボ

キュウリ

鮮度・用途

朝採り、イボ、加熱調理用

トマトやイチゴは「品種と味」で勝負できますが、ナス・ピーマン・キュウリは「食べ方(用途)」や「ターゲット(子供など)」を変えることで新しい価値を生み出しているのが現状です。

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