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新規雇用就農者は20代・30代が中心自営就農との違いから見る、農業の担い手構造

農業の担い手不足が課題とされる中で、「新規就農者をどう増やすか」は重要な論点です。

しかし、ひとことで新規就農者といっても、その中身は一様ではありません。

自分で農業経営を始める「自営就農」と、農業法人や農業経営体に雇われて働く「雇用就農」では、年齢構成も、参入の背景も、担い手としての役割も大きく異なります。

令和5年の新規雇用就農者は9,300人でした。

雇用就農は、自営で農業を始めるのではなく、農業法人や経営体に就職・転職する形で農業に入るルートです。近年は、農業法人の拡大や企業的な農業経営の広がりにより、農業を「働く職場」として選ぶ人も増えています。

今回は、新規雇用就農者の年齢構成をもとに、自営就農との違いと、農業の担い手構造について整理します。


1. 新規雇用就農者の中心は20代・30代

令和5年の新規雇用就農者を年齢階級別に見ると、最も多いのは20〜29歳の2,770人です。

次いで多いのが40〜49歳の1,900人、30〜39歳の1,750人です。

つまり、新規雇用就農者の中心は、20代から40代の現役世代です。

15〜19歳も460人いますが、全体のボリュームゾーンは明らかに20代・30代・40代にあります。

この構成から分かるのは、雇用就農が若い世代や働き盛り世代にとって、農業に入る現実的な入口になっているということです。

自営で農業を始める場合、農地、機械、施設、資金、販路、住まいなど、多くの準備が必要になります。特に非農家出身者がいきなり独立するには、ハードルが高くなります。

一方で、雇用就農であれば、農業法人や経営体に所属し、給与を得ながら農業に関わることができます。

農業に関心はあるが、いきなり独立するのは難しい。技術を学びながら働きたい。農業を職業として経験してみたい。地域に移住する前に農業の現場を知りたい。

こうした人にとって、雇用就農は重要な選択肢になります。


2. 高齢層の割合は自営就農より小さい

一方で、新規雇用就農者における高齢層の人数は限定的です。

50〜59歳は1,160人、60〜64歳は490人、65歳以上は770人です。

もちろん、50代以上の雇用就農者も一定数います。しかし、年齢構成全体で見ると、雇用就農は若年層から中年層が中心です。

これは、自営就農とは大きく異なる点です。

自営就農では、定年後の農業参入、親元就農、農家の継承、退職後の農業経営などが含まれるため、高齢層の比重が大きくなりやすい傾向があります。

それに対して、雇用就農は「農業法人に就職する」「農業分野へ転職する」という性格が強いため、労働市場にいる現役世代が中心になりやすいと考えられます。

つまり、同じ新規就農でも、自営就農と雇用就農では、参入している人の年齢構造がかなり違います。


3. 自営就農と雇用就農では、担い手の性格が違う

新規就農者を考えるときに重要なのは、「人数」だけを見るのではなく、「どの形態で農業に入っているのか」を見ることです。

自営就農と雇用就農では、担い手としての性格が異なります。

自営就農は、自分で農業経営を行う形です。農地や機械を確保し、資金を調達し、作目を選び、販路を作り、経営責任を自分で負います。

そのため、自営就農は経営者としての参入です。

一方、雇用就農は、農業法人や農業経営体に雇用される形です。労働者として農業に入り、給与を得ながら農業に従事します。

そのため、雇用就農は職業として農業に入るルートです。

整理すると、次のようになります。

自営就農は、経営者として農業に入る形です。雇用就農は、従業員として農業に入る形です。

この違いは、農業の担い手政策を考えるうえで非常に重要です。

新規就農者数が同じでも、自営就農者が増えているのか、雇用就農者が増えているのかによって、意味は変わります。

自営就農者が増えることは、新しい農業経営体の創出につながります。雇用就農者が増えることは、既存の農業法人や大規模経営体の労働力確保につながります。

どちらも重要ですが、役割は同じではありません。


4. 雇用就農は若い担い手の入口になっている

新規雇用就農者の中心が20代・30代・40代であることは、農業の担い手確保を考えるうえで大きな意味があります。

若い世代が農業に関心を持ったとしても、最初から自営で独立するのは簡単ではありません。

農地を借りる必要があります。農業機械や施設を用意する必要があります。資金調達が必要です。栽培技術を習得する必要があります。販路を作る必要があります。生活費を確保する必要があります。

こうした条件をすべて自分で整えるのは、特に非農家出身者にとって大きな負担です。

その点、雇用就農は、農業に入るハードルを下げる役割を持っています。

まず農業法人で働く。現場で技術を学ぶ。農業の仕事が自分に合うか確かめる。将来的に独立するか、法人内でキャリアを積むかを考える。

こうした段階的な参入が可能になります。

つまり、雇用就農は、若い世代にとって農業との接点を作る入口になっています。

農業をいきなり「独立・経営」として考えるのではなく、「就職・転職先」として選べることは、担い手確保において重要です。


5. 農業法人や企業的経営の存在感が増している

雇用就農が成立する背景には、農業法人や企業的な農業経営の拡大があります。

個人経営の農家だけでなく、法人化した農業経営体、大規模経営体、施設園芸、畜産、加工・販売まで含めた経営体などが増えることで、農業にも雇用の受け皿が生まれます。

この変化により、農業は「家業」や「自営」だけでなく、「職業」として選ばれる領域にもなっています。

これは、農業の担い手構造にとって大きな変化です。

かつては、農業に入るには家を継ぐ、農地を持つ、独立するというイメージが強かったかもしれません。

しかし現在は、農業法人に就職する、農業分野に転職する、現場で経験を積んでから独立するというルートもあります。

特に若い世代にとって、雇用就農は農業への現実的な入口です。

ただし、雇用就農が増えればすべて解決するわけではありません。

農業法人側には、給与水準、労働環境、教育体制、キャリアパス、人材定着の課題があります。就農者側にも、農業の仕事の厳しさ、季節変動、体力負担、地域生活への適応といった課題があります。

雇用就農を担い手確保につなげるには、単に人を採用するだけでなく、農業の職場としての魅力と継続性を高める必要があります。


6. 担い手政策では「就農形態の違い」を見る必要がある

農業の担い手不足を考えるとき、新規就農者数だけを見ても不十分です。

重要なのは、誰が、どの年齢層で、どの形態で農業に入っているのかです。

今回のデータからは、次のような構造が見えてきます。

自営就農は、高齢層や継承的な参入を含みやすい。雇用就農は、20代から40代の現役世代が中心になりやすい。

この違いを無視して「新規就農者が増えた」「減った」と見ると、実態を誤ります。

例えば、若い担い手を増やしたいのであれば、雇用就農の受け皿をどう広げるかが重要になります。

一方で、自営農業経営者を増やしたいのであれば、農地確保、資金調達、研修、経営開始支援、販路づくりなど、独立就農を支える仕組みが必要です。

雇用就農と自営就農は、どちらか一方だけで農業の担い手問題を解決できるものではありません。

雇用就農は、若い世代の入口になる。自営就農は、新しい農業経営体や地域の経営継承につながる。雇用から独立へ進むルートもある。

このように、複数の入口を組み合わせて考える必要があります。


まとめ:若い世代の農業参入は、雇用就農が大きな入口になっている

令和5年の新規雇用就農者は9,300人でした。

年齢構成を見ると、中心は20代・30代・40代の現役世代です。特に20〜29歳が最も多く、雇用就農が若い世代の農業参入の入口になっていることが分かります。

一方で、高齢層の比重は自営就農に比べると小さくなっています。

この点は、自営就農との大きな違いです。

自営就農は、経営者として農業に入るルートです。雇用就農は、職業として農業に入るルートです。

同じ新規就農でも、両者の役割は異なります。

農業の担い手を確保するには、単に新規就農者数を見るだけでは不十分です。若い世代がどのルートから農業に入っているのか、どの形態が受け皿になっているのかを把握する必要があります。

今回のデータから見えるのは、若い世代の入口として雇用就農が重要になっているということです。

今後の担い手政策では、雇用就農を農業への入口として位置づけつつ、そこから定着、キャリア形成、場合によっては独立就農へつながる流れをどう作るかが重要になります。

農業の担い手構造は、自営だけで見ても、雇用だけで見ても不十分です。

自営就農と雇用就農の違いを見たうえで、若い世代が農業に入り、続けられる仕組みを考える必要があります。

 
 

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