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驚くほど収量が上がる!トマト栽培を変えるCO2施用の新常識5選

更新日:11月11日

植物の成長には二酸化炭素(CO2)が不可欠。これは、誰もが知る事実です。しかし、その与え方次第で収穫量が劇的に変わることはご存知でしょうか?従来の常識を覆す、驚くべき最新技術が次々と登場しています。ただ闇雲にCO2を与える時代は終わり、いかに賢く、効率的に植物のポテンシャルを引き出すかが鍵となっています。

この記事では、トマト栽培を例に、あなたの農業を次のステージへと導くCO2施用の「新常識」を5つ厳選してご紹介します。


Eye-level view of ripe tomatoes in a greenhouse
Ripe tomatoes thriving in a well-ventilated greenhouse.

1. 「多ければ多いほど良い」はもう古い!常識を覆す「低濃度・長時間」という新発想


最初の新常識は、まさに逆転の発想です。従来は「早朝、ハウスを密閉している間に高濃度で施用する」のが一般的でした。しかし最新の研究では、外気と同じか少し高い程度(400〜500ppm)の低濃度で、日中長時間にわたって施用する方が、実は効率的で収量も向上することが明らかになっています。

なぜなら、ハウスには目に見えない隙間が多く、高濃度でCO2を施用しても、その大半は作物に吸収される前に外へ漏れ出して無駄になっていたのです。

この効果はデータでも裏付けられています。千葉県で行われたキュウリの栽培試験(表1)では、「低濃度長時間」区が、慣行の「早朝高濃度」区よりも170kgも少ないCO2施用量で、収量を1.2トンも上回るという、驚くべき効率性を達成しました。つまり、少ない投資(CO2)で、より大きなリターン(収量)を得られる、費用対効果に優れた手法なのです。


表1:炭酸ガスの施用法が促成キュウリの収量に及ぼす影響

試験区

総収量 (t/10a)

炭酸ガス施用量 (kg/10a)

低濃度長時間区

11.3

1,700

慣行(早朝高濃度)区

10.1

1,870

無施用区

7.5

0

出典: 千葉県・千葉県農林水産技術会議「トマト・キュウリにおける炭酸ガス施用の技術指導マニュアル」


さらに、長崎県で行われたトマトの試験でも、「400ppm施用」が「700ppm施用」よりも可販果収量で優れる傾向が示されており、この新常識の有効性が証明されています。

しかし、ハウス内のCO2濃度を最適化するだけでは十分ではありません。そのCO2を、植物が確実に「吸える」状態にしなければならないのです。



2. 目に見えない「バリア」が成長を妨げていた!循環扇で解決する葉の周りの空気問題


CO2濃度を適切に管理しても、植物がそれを十分に吸収できていなければ意味がありません。実は、植物の葉の周りには「葉面境界層」と呼ばれる、CO2吸収を妨げる「目に見えないバリア」が存在します。

植物が光合成を行うと、葉の表面にある気孔からCO2を吸収し、酸素を排出します。そのため、葉のすぐ周りにはCO2が薄く、酸素が濃い空気の層ができてしまいます。この層がバリアとなり、ハウス内の新鮮なCO2が葉に届きにくくなるだけでなく、高濃度の酸素は光合成を阻害することもあります。

この問題を解決するシンプルかつ効果的な方法が「循環扇」の活用です。強すぎない風でハウス内の空気をゆっくりと攪拌し、この葉面境界層を壊してあげることで、植物は効率的にCO2を吸収できるようになります。ポイントは、葉がかすかに揺らぐ程度の優しい風。このわずかな工夫が、施用したCO2を無駄なく光合成に直結させ、収益性を高めるのです。



3. 本当の課題は冬じゃない!高温期の換気問題を解決する「液化炭酸ガス」


CO2施用と聞くと、ハウスを密閉する冬場の技術というイメージが強いかもしれません。しかし、本当に難しいのは、高温で換気が必須となる夏場などの「高温期」です。

従来のプロパンガスなどを燃焼させる方式では、CO2と同時に熱が発生するため、ハウス内の温度が上昇してしまいます。そのため、天窓を開けて換気が必要な時期には、せっかく施用したCO2が熱と一緒に外へ逃げてしまい、ほとんど使えませんでした。

この課題を解決するのが「液化炭酸ガス」方式です。この方式はボンベやタンクからCO2を供給するため熱を発生させません。さらに、細いチューブを使って株元に直接CO2を送り込むことができるため、換気中であっても群落周辺のCO2濃度を効率的に高めることが可能です。高温期の収量低下という長年の課題を克服し、年間を通じた安定生産と収益機会の最大化を実現します。

あるトマトの栽培試験では、従来の燃焼方式に比べ、液化炭酸ガス方式を用いた作型で可販果収量が7.68t/10aから9.62t/10aへと、約25%も増加したというデータもあり、高温期の収量アップに絶大な効果を発揮します。


Close-up view of a CO2 delivery system in action
A state-of-the-art CO2 delivery system enhancing plant growth.


4. 暖房費は下げて、収量は上げる!「局所加温」との合わせ技が生む究極のシナジー


省エネと増収。この二つを同時に実現する、まさに究極の組み合わせ技術が登場しています。

ミニトマトの栽培では、ハウス全体を暖めるのではなく、温風ダクトを使って植物の「成長点だけを局所的に加温する」という省エネ技術があります。植物が最も温度を必要とする部分だけを効率的に暖めることで、無駄な燃料消費を抑える仕組みです。

ここからが本題です。この暖房に使う温風ダクトと送風機能を、そのままCO2の供給にも利用するのです。CO2発生器の排気を暖房機の吸気口に誘導し、同じダクトからCO2を送り出すことで、新たな設備投資なしで効率的なCO2施用が可能になります。

和歌山県で行われた実証試験では、この合わせ技によって「暖房費を約18%削減」しながら、「ミニトマトの出荷量が9.4%増加」するという驚くべき結果が出ています。これはまさに、コスト削減と収益向上を両立する究極のシナジーと言えるでしょう。



5. CO2を与えたら、ご飯も増やして!見落としがちな「養水分」との深い関係


最後の新常識は、CO2施用を単体の技術として捉えるのではなく、栽培全体のバランスで考えるという視点です。CO2を与えて光合成が活発になると、植物の成長スピードは上がります。それはつまり、植物の「食欲」も増進するということです。

熊本県の試験によると、CO2施用によって植物の乾物重(植物体そのものの重さ)は増加しますが、葉や果実に含まれる養分の「含有率」自体は大きくは変わりませんでした。これは何を意味するのでしょうか?

答えは、「成長が旺盛になった分だけ、より多くの水と肥料(養分)を土から吸収している」ということです。CO2施用で収量を増やすには、その成長に見合った追肥やかん水が不可欠なのです。光合成というエンジンをパワーアップさせたら、燃料である水と栄養もしっかり補給してあげましょう。


High angle view of a modern greenhouse technology setup
An innovative greenhouse showcasing advanced technologies for plant cultivation.

まとめ


これらの事例が示すのは、CO2施用が「量」の課題から「質とタイミング」の課題へと、根本的にシフトしたという事実です。低濃度での長時間施用、循環扇による空気の攪拌、高温期対策としての液化炭酸ガス、そして局所加温とのシナジー。これらはすべて、「いかに賢く、効率的に、そして植物の生理に合わせて供給するか」という精密な科学の答えであり、少ない投資で最大の効果を得るための知恵です。


これらのスマートな技術は、ハウス栽培の可能性を大きく広げます。次に私たちは、植物の成長を阻むどのような「見えない壁」を発見し、乗り越えていくのでしょうか。未来の農業は、もう始まっています。



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