【徹底比較】生産現場で役立つ農業IoT機器の選び方と具体的な活用事例
- GREEN OFFSHORE info チーム

- 4 日前
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近年、IoT(モノのインターネット)が農業分野で急速に発展しており、特に大規模農家や小規模農家、施設園芸関係者にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。この技術を利用することで、手間を減らし、勘に頼らない効率的な作業を実現するための助けとなります。本記事では、生産現場でのIoT機器を徹底的に比較し、どのような機器が役立つのかを具体的に解説していきます。

IoT機器の導入がもたらすメリット
IoT機器を導入することによって、多くのメリットが得られます。特に、人手不足や作業知識の伝播という課題に対して、以下のような効果が期待されます。
データ収集の自動化: センサーがリアルタイムでデータを収集し、熟練者の経験や勘を「客観的な数値」に変換することで、作業の最適化と新規就農者への技術伝承に寄与します。
リモートモニタリング: 離れた場所からでもハウス内の温度や湿度、土壌水分などの状況を確認でき、異常発生時に迅速な対応(例:スマートフォンからの窓開閉指示)が可能になります。
コスト削減: 作業の効率化だけでなく、CO2施用や灌水の無駄を最小限に抑えることで、資材費や人件費といった無駄なコストを具体的な数値で削減できます。
これらのメリットを享受するために、適切なIoT機器を選ぶことが重要です。
温度センサーの種類と選び方
温度センサーは、農業における環境管理において基本的な役割を果たします。特に、生産現場では強制通風型の温度センサーが推奨されています。このセンサーは、強制的に空気を流すことにより、周囲の温度をより正確に測定できます。
温度センサーの具体的な利点と選び方
項目 | 具体的な優位性 / 事例 |
精度 | 強制通風型は、ハウス内の日射による輻射熱(熱の蓄積)の影響を最小限に抑えるため、植物の生育環境により近い正確なデータを提供します。非通風型と比べ、日中の誤差を1℃以内に抑えられます。 |
リアルタイム性 | 即座に環境の変化を捉えられ、設定したしきい値を超えた際に、即座に換気扇や窓を自動制御する判断材料となります。 |
設置・メンテナンス | 設置にあたっては、センサーが正常に機能するために直射日光や灌水の影響を受けない場所を選ぶことが重要です。定期的にファンの動作チェックが必要です。 |
IT工房Z社のあぐりログなどの強制通風型センサーは、高い精度とリアルタイム性を両立させ、最適な作物生育環境の維持に貢献します。
計測機器ロガーの役割と選び方(データを「記録」し「活用」する)
センサーが取得したデータを確実に記録し、活用可能な状態に保つのが計測機器ロガー(データロガー)の役割です。ロガーは、センサーとデータ管理システムの中間に位置し、農業IoTにおける心臓部と言えます。
ロガーは大きく分けて、現地PCに接続してデータを保存するタイプ(専用機器でデータ保存するタイプもこちらに含めます)と、専用機器でクラウドにデータを送信・保存するタイプがあります。それぞれに一長一短があり、設置環境や運用方法によって最適な選択肢が異なります。
ロガーのタイプ | メリット | デメリット |
PC接続・ローカル保存型 | 通信回線や月額の通信利用料が不要。現地に持ち込めば、その場ですぐに計測データを確認できる。 | 設置環境の過酷さ(高温多湿、粉塵など)により、特にPC本体の故障リスクが通常よりもかなり高くなる。特にハウス内の温度上昇でPCの動作温度範囲を超え、一時的にデータが取れなくなる可能性もある。 専用機器タイプは時系列データの確認にはデータを持ち出す必要がある。 |
専用クラウド型(ネットワーク接続) | 計測データがクラウド上に自動保存されるため、PCタイプとは異なりデータの紛失リスクがない。スマートフォンなどから遠隔地でもリアルタイムに計測値の確認が容易に行える。 | データをクラウドに送信・保存・管理するための月額利用料が継続的に発生する。 |
過酷な環境でのデータ保全性や利便性を優先するなら専用クラウド型、初期コストやランニングコストの抑制を最優先するならPC接続型が選択肢となりますが、長期的・安定的なデータ活用には、データ保全性に優れるクラウド型が推奨されます。

土壌センサーの比較:何を測るかが重要
土壌センサーには主に2つのタイプがあります:体積含水率型と水分ポテンシャル型です。後者は現場で馴染み深いものですが、実際の利用においては遠隔計測サービスが少ないのが現状です。
体積含水率型 vs 水分ポテンシャル型の具体的な比較
タイプ | 長所・適した用途 | 短所・課題 | 作物・土壌との関連付け |
体積含水率型 | 設置が簡単で、水やり直後の水分量の変化(何リットル入ったか)を追跡しやすい。 | 土壌の種類(砂土、粘土など)や塩分によって計測値が大きく変動し、土壌改良時には再キャリブレーションが必要になる。 | 培地栽培やロックウールなど、土壌種類が均一な環境に適しています。 |
水分ポテンシャル型 | 植物が水を吸う難易度(水分ストレス度)を直接示すため、灌水判断に最適。計測値が土壌種類に依存しにくい。 | 現場で馴染みの深いテンシオメーターは遠隔計測に対応していないものが多く、IoT化には専用の通信モジュールと高いコストがかかることが多い。 | イチゴ、トマトなど、水分ストレス管理による品質向上が重要な作物に適しています。 |
適切なセンサーを選ぶことで、経験に頼らず、植物の「喉の渇き」に応じた緻密な水分管理が可能になります。

CO2センサーの重要性:資材の無駄をなくす
施設園芸において、CO2センサーは必要不可欠な機器です。光合成に必要なCO2濃度をリアルタイムで計測することで、施用の最適化が可能となり、コスト削減にも貢献します。
CO2センサーの具体的な利点と施用効率化
項目 | 具体的な効果とGO SWITCHの連携 |
効率的な施用 | CO2濃度を400 ppmから1,000 ppm程度に高めることで収量が10%~20%向上する可能性があります。しかし、窓開けとCO2施用が重なると高価なCO2が無駄になります。 |
経済性 | CO2センサーのデータと窓の開度、日射量のデータを連携させ、CO2施用中の換気量を最小限に抑える自動制御を行うことで、施用コストを削減し、投資対効果が得やすくなります。 |
失敗を避けるための鍵は、計測データを手動で判断する段階から、GO SWITCHのように施用と換気を連携させた制御へと段階的に進んでいくことです。
環境センサーの活用と今後の展望
環境センサーは、作物が成長する環境を最適化するために重要です。例えば、あぐりログのようなデータ管理サービスを採用することで、センサーから得られるデータを効率的に管理できます。
環境センサーが「適切な判断」を助ける具体例
過去データとの比較: リアルタイムの温度データを、過去3年間で最も収量が多かった日の同時刻のデータと並べて比較し、現在の環境が理想的か判断できます。
シンプルな統合表示: 複雑なセンサーの数値(温度、湿度、CO2、土壌ECなど)を一つのダッシュボードに統合し、「快適度」や「ストレス度」といった単純化された指標で表示。農業関係者が直感的に適切な判断を行うための助けになります。
今後、環境センサーの導入はより進み、農業分野におけるデジタル化は加速するでしょう。IoT機器を導入することは、農業経営において必要不可欠な選択肢です。温度センサー、土壌センサー、CO2センサーなど環境センサーの特性を理解し、自社のニーズに合った機器を選ぶことで、作業効率が向上し、人手不足の問題に対する解決策が見つかるかもしれません。


