脱炭素化社会が目指されている昨今。
企業などが排出するCO2の量に価格をつけて、排出する人々の行動を変化させようとする政策「カーボンプライシング」が行われています。
政府が行うカーボンプライシングにはさまざまな種類があり、排出量に応じて課税する「炭素税」、企業ごとに排出量を設定して超える分を購入させる「キャップ&トレード」などが挙げられ、これらは法的な拘束力を持っています。
一方、法的な拘束力はないけれど、排出削減量に価格をつけて取引ができるのがカーボン・クレジット。このカーボン・クレジットの中にもさらにいくつか種類があり、国際機関や政府が主導するものから、民間手動のものまで数多く存在します。
欧米で市場が拡大しているのはボランタリー・クレジット
政府主導のカーボン・クレジットには、国連の京都議定書に基づくCDMのクレジット、日本国内のJ-クレジット制度、二国間クレジットなどがあります。
ただ、近年CDMクレジットなどの発行は急減しており、代わりに民間主導のボランタリー・クレジットが拡大。
日本ではまだ馴染みが薄いものの、欧米ではこちらの発行が急増しているといいます。
ボランタリー・クレジットはNGOや企業、団体、個人など、民間が主導して発行するクレジット。法的な拘束力がなく、政策に左右されないながら、GHG(温室効果ガス)排出量を相殺するために活用できることが理由の一つ。つまり制約が緩く自由度が高く、その反面クレジットとして利用価値があることから、発行量が増えているのです。
幅広い産業の企業が、このボランタリー・クレジットを活用しています。
ボランタリー・クレジットの中でも、世界で最も多く取引されているのがVerified Carbon Standard(VSC)です。国際的なカーボンオフセット基準管理団体米Verraによって開発・管理されているもので、幅広い方法論でクレジットを創出できることが特徴。
今、認められているものでは、エネルギー・工業プロセス・建設・輸送・廃棄物・工業・農業・森林・草地・湿地・家畜・家畜と糞尿の11種類。
2050年までのカーボンニュートラル達成を目指す、フォルクスワーゲンなどが利用しています。
ほかに、Gold Standard(GS)、ACR(American Carbon Registry)、CAR(Climate Action Reserve)などが代表的なクレジット発行機関です。
そして先ほどあげたフォルクスワーゲンのほか、グーグル、メルセデス・ベンツなどが活用している様子。しかし、海外に比べて国内ではクレジットを利用する企業が多くありません。
そして国内では「どこでどうやって購入するか」もまだまだ確立されていない状況。国際認証済みのボランタリー・クレジットを、オンラインで少量から購入できるオンラインマルシェが最近日本に登場したばかりです。
ちなみに政府主導のJ-クレジットは認証プロバイダーで購入が可能ですが。
(経済産業省/中小企業のカーボンニュートラル施策について /令和4年7月)
このあたりを読んでみると、大企業が環境問題に真摯に取り組む姿勢を見せるメリットに比べ、中小企業がそれを行う理由づけが「なんかよくわからない」状況だなと感じられます。
何もしてないよっていう企業が多いですし、必要性がわからない状況。そして「それを意識して進めて行くための補助金制度一覧」が載っています。
「今月、ちょっとカーボン出しすぎたみたいだから、クレジット買っとくね」という会話が、未来のどこかの会社で聞こえてくるような世界線が来るのでしょうか。はてさて。