卸売市場に集めてから流通させるのとは異なり、生産者が消費者へダイレクトに販売できる産直ビジネスが成長を続けています。
「食べチョク」や「ポケットマルシェ」をはじめ、オンラインマルシェのプラットフォームがいくつかありますが、流通販路としてこの方法は拡大するのでしょうか?
少し調べてみたいと思います。
まず、産直野菜はおいしい
個人的な実体験からの感想ですが、産直野菜はおいしい。これまで何度もスーパーでイチゴを買い、カットした時に「中がまだ真っ白」「甘くないどころか味がしない」とガッカリすることが幾度もありました。
その後、イチゴ農園で完熟イチゴと書かれた商品を購入してみました。
これが、おいしい。
まず中まで色づいているし、香りが強く、甘く、ジューシー。イチゴとはこういうものだというイメージを具現化したような味。
ただ、完熟した状態で収穫しているため、あっという間に腐ってしまいます。ギリギリの一番おいしいところで売ってくれているのです。「ジャム用イチゴ」と書かれた1キロ400円の規格外を購入したときは、当日中に煮てしまわないとカビてしまうほど。
もうスーパーでイチゴを買うのは気が引けてしまうのですが、イチゴ農園へ往復するだけで時間とガソリンを使ってしまいます。
このもどかしさを埋めてくれるのが、オンラインマルシェ。
現状の産直ビジネスの状況
(矢野経済研究所/産直ビジネスに関する調査を実施(2020年))
上記の記事を拝見すると、2019年の産直市場規模は2兆9,424億円。全体(9兆2,250億円)の約32%です。そして2015年からは約2倍に拡大しています。
市場としては今後も拡大していくだろうという見解が述べられていますが、果たしてどうなのでしょうか。
オンラインマルシェを利用した人たちのクチコミは、検索するとあれこれ出てきます。もちろん「おいしかった!」というコメントもたくさん。
同じくらい、デメリットも色々ありそうです。
■値段が高い
これ。
値段については、野菜本体が高い。送料が高い。その両方への意見があります。ただ、野菜本体の価格については「味にこだわって栽培しているから」「手間をかけているから」などの理由があるというコメントもありますが、送料への印象は総じて「高い」。
「分かってはいるものの、送料込みで総額計算したときに、商品代の倍額を請求されることにひるんでしまう」
そんな声も見受けられました。
ただ運んでもらうという考えだと高いのですが、自分が産地へ赴いて購入するコストと比べるとリーズナブルではあります。
■届いた野菜が悪くなっていた
これも。
スーパーで購入するときも、「このアボカド中身大丈夫かな」「このスイカどう?」とじっくり観察しながら選びます。レタスも購入後に包丁で割ってみたら、中身が茶色いこともありました。親切なスーパーなら「中身が傷んでいたら持ってきてください」と書かれてたりします。
しかし、通販の場合は到着するまで全く分かりません。
おそらく送った農家さんでさえ、わからないことも多いでしょう。
そして返品や返金対応も「その人次第」だったり、マルシェ自体の対応も迅速ではなかったり、スムーズではないようです。
■種類が多すぎて選べない
今、食べチョクで「トマト」を検索してみたところ結果は1788件でした。
ここから何を軸にして選ぶべきかは、大変難しい。
「食べチョク」を初期から利用している生産者さんの話を聞いたことがありますが、「最初はアルゴリズムがシンプルで、とにかく更新すればトップ画面に出てきた。おかげでかなり知名度が上がりました。でも、途中からアルゴリズムが変わったので今はもうダメですね」
そうなのです。
マルシェの規模が小さい頃なら、商品数が多くないため、PRしやすい部分はありそうですが。情報が増えてくると、その中で競争に勝たなくてはいけなくなります。
買う方も、バイヤーの視点を入れておすすめを教えて欲しくなってしまいます。
→この課題を解決するための、おすすめアイテム厳選プランのようなものが存在しています。でもどうやって選んでいるんでしょうね?
なんとなく、バランスの取れた世界線を想像する
数字とコメントと記事を追っていくと、「産直を上手に活用する人はして、しない人はしない」世界線を想像しました。
販売者側の視点としては、直販は中間マージンを利益として回収できるので、売り上げが増える、市場に卸せない規格外商品を販売できる、自分自身をブランド化して売り上げを伸ばせるなどのメリットがあります。その反面、「全部自分で頑張る」という大きなハードルがあるのです。綺麗に梱包して一筆手紙を入れるだけで、時間との戦い!
購入者側の視点としても、市場を介さず購入できるので一番おいしい状態で購入できる、近隣で購入できない食材に出会える、生産者に直接質問ができる、オーガニック野菜などが手に入りやすいなどのメリットがあります。が、当たり外れがある場合や、コストが高くなる傾向にあります。
産直市場の拡大を受けて、卸売市場も規制を緩和しています。民間業者が卸売市場参入できるようになったこと、仲卸業者などの固定業者以外にも販売してくれること、産地から消費者へ直接送ってもいいなど、自由度は高まっています。
食卓にのぼる素材すべてが産直になる可能性は高くなく、おそらく取り入れるとすれば「こだわりたい一部の食材」なのではないでしょうか。
産直素材が、今後どこまで食い込めるのかがポイントであるように感じます。
直販するために、なくてはならない流通においても2024年問題が控えていますし、拡大は続かないように感じます。
(矢野経済研究所/産直ビジネスに関する調査を実施(2020年))
前出の上記記事では、2024年の産直農産品市場規模は3兆5,489億円前後と予測されていますが、さて、どうなるのでしょうか。
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