ちょこちょこと農家さんからお話をうかがう機会があります。
その中で気になるのは「皆さん、一体いつ休んでるの???」ということです。むしろ休みという存在があるのかどうか。
以前西洋ハーブ栽培30年のプロフェッショナルにお話を伺ったときは、「過去30年で1泊2日の旅行をしたのは1回きり。それも旅先から他の家族に電話して、水やりを依頼しました」と。
自然相手、天候次第でスケジュールがどんどん変わる農業。決めた予定通りには進みませんし、思い切って休んでも「畑が気になってしょうがない」というケースが多いようです。
農家は個人事業主と、農業法人の2パターン
農家の皆さんは家族経営であるケースが多いでしょう。つまり個人事業主です。個人事業主自体に労働基準法は適用されませんから、労働時間も休日も自由です。
そうなると労働時間や休みが不規則になりがち。
個人で働くフリーカメラマンなどが「スケジュールが空いていると恐怖。だから空いている日を見つけると営業をかけて埋めてしまう」というのと同様、おそらく「何かをしていないとむしろ落ち着かない」部分があるのかもしれません(想像が混じっています)。
では、個人事業主ではなく社員として農業法人に就職すれば安心かというと、そうでもありません。農業には労働基準法の適用外があるのです。労働基準法は、個人経営や法人経営を問わず、人を雇う際に守らねばならない法律。
(StepWAP「農業における労働基準法適用 」)
社員に働いてもらうときに守るべき「1日8時間、週40時間」「一定時間以上働く場合の休憩」「1週間に1日、または4週間で4日以上の休日」「時間外労働の割増賃金」などは、総じて適用されません。これらを「農業適用除外6項目」と呼びます。
事業が天候に左右されることから、時間や休日を規定しにくいという理由があるそう。
気兼ねなく「安心」できる時間を
休めないからツライ、スケジュールが思い通りにならないからしんどい、というだけの話ではありません。しっかり意見を聞くと、以下のような声が聞こえてくるからです。
「手をかけるほどうまく作物が育ち、成果として現れることが面白い」
「毎日、作物の成長を見に行きたくなる」
常に、一年ごとに成果の出るプロジェクトを動かしているわけですから、やりがいも大きい。実った時の感慨、出荷した時の安堵は、想像する以上なのかもしれません。
だからこそ、プロジェクトを完遂するまでは気が抜けないのではないでしょうか。そしてそのプロジェクトは、収穫を終えてからも続くのです。
ならば、こう考えます。
「どうしても家を空ける必要がある」時に、安心して遠隔地から畑を見守れるシステムがあれば、もう少しだけ心が緩むのではないかということ。せめて夜眠る間は見守りをシステムに任せるなど、短時間でも解放される瞬間があれば心にゆとりが持てるはず。
このあたりにスマート農業が担える領域があると考えています。
例えば、遠隔地からの水やり、ハウスの窓の開け閉めなどなど..。それを、より深くヒアリングしながら考えていきたい今日この頃です。
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